福岡高等裁判所 昭和27年(う)163号 判決
第一審の裁判において、懲役刑につき刑の執行猶予の言渡があつた後、検察官において法律上、執行猶予の言渡の障害となるべき前科事実の証明資料を発見し、第一審の弁論終結前にその取調を請求することができなかつた事情が、被告人に於て、前科の有無に関する質問に対し警察、検察庁並びに公判を通じ、終始一貫して前科はない旨答え、前科の事実を申し述べなかつたこと、被告人の本籍地又は、前科の関係裁判所検察庁等の所在地が遠隔の地であつて前科の取調に関し、相当の日時と不便とが免かれ難い実情にあつたこと、等の事情に基因する場合には検察官は控訴審において、それらの事由を疎明し、前科に関する事実の取調を請求することができるものと解するのが相当である。
(中略)
法律上刑の執行猶予の言渡の障害となるべき、前科の事実があるのに、その事実がないものと誤認したものというのほかなく、右事実誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由があり、原判決は、破棄を免れない。よつて刑訴第三九七条第三八二条により原判決を破棄し、刑訴第四〇〇条但書に従い本件につき更に判決する。